診療内容
日本超音波医学会認定の超音波指導医が、高性能な超音波診断装置を用いて、胎児の形態異常(いわゆる奇形)の出生前診断を行う専門の外来です。
超音波断層法だけでなく、より正確な診断のため、必要に応じて、血流を診る超音波ドプラ法や3次元超音波も使用します。
日本で生まれる赤ちゃんの100人のうち、3人から5人に何らかの形態異常(いわゆる奇形)があるといわれています。
形態異常の中には、小さな異常のために生まれた後も全く問題がなかったり治療が必要ない異常も少なくありませんが、出生前診断がなされていなかったために妊娠中や出産の時、あるいは出生後数日以内に急に容態が悪くなって亡くなってしまったり、一生涯重い後遺症を残してしまったりするようなたいへんな異常もあります。
胎児超音波専門外来では、このような命にかかわる、あるいは出生前診断がなされていなかったために重い後遺症を残してしまうような形態異常が無いかどうかを中心に超音波指導医・専門医が出生前診断を行います。
出生前診断について
生まれる前に胎児の異常を診断することを出生前診断といいます。胎児の異常には、下記の4つがあります。
- 発育の異常
- 形態の異常(いわゆる奇形)
- 病気
- 染色体の異常
妊婦さんの血液を調べて胎児にダウン症などの一部の染色体異常が有るか無いかを調べる検査が行われるようになったころ、一部のマスコミが「出生前診断=染色体異常の診断」という形で報道したため、「出生前診断=胎児の染色体異常を診断すること」という誤ったイメージが広がってしまいましたが、染色体異常の出生前診断は、正確には「遺伝学的出生前診断」であり、出生前診断全体の一部でしかありません。
超音波検査による出生前診断について
出生前診断における検査の中心は超音波検査(エコー検査)です。胎児の各部分を直接観察することによって、出生前診断の中の①発育の異常、②形態の異常、③病気の大半が診断できます。これらの異常は、通常の妊婦健診で行っている超音波検査で偶然見つかることも少なくありませんが、②の形態異常は通常の妊婦健診で行われる超音波検査では気付かれないことも多いため、ある程度の時間をかけて胎児の全身をていねいにチェックする必要があります。これには形態異常が有りそうかどうかをチェックする胎児形態異常スクリーニング検査(通常の妊婦健診とは別枠で行われることが多く、胎児精密超音波検査とか、胎児ドックなどと呼んでいる施設もあります)と、胎児超音波診断に詳しい医師が診断を行うために行う超音波検査とがあります。
通常は、スクリーニング検査を行って異常がありそうな胎児をピックアップして、胎児超音波診断に詳しい医師が別の時間、あるいは別の病院で超音波検査をやり直して診断するという2段階方式で行われることが多いのですが、胎児超音波専門外来では、この2つを同時に行います。
日本では、この形態異常を見つけるための胎児超音波検査(胎児エコー)は、すべての妊婦さんに行う標準的な検査ではないとされているため、通常の妊婦健診で超音波検査を行っていても、形態異常を見つけるための胎児超音波検査は行っていないという病院やクリニックも少なくありません。
超音波検査を行う妊娠週数
胎児超音波専門外来では、胎児の形がある程度分かるようになる妊娠10週以降なら分娩までの期間、いつでも胎児超音波検査を受けることができます。
妊娠10週~14週胎児が小さいので細かい部分までは観察しにくいのですが、無頭蓋症、全前脳胞症、body stalk anomaly、不完全な内臓逆位(内臓錯位)、心臓逸脱症、肺無形成症、巨大膀胱、人魚体奇形、無心体、結合双胎などの大きな異常の有無をチェックします。また、いくつかの形態異常の組み合わせから、13トリソミーや18トリソミーのような染色体異常が分かる場合もあります。また、この時期の超音波検査で、妊婦さんの卵巣に腫瘍が見つかることもあります。
この時期は、胎児の染色体異常(主としてダウン症、13トリソミー、18トリソミー)の可能性(確率)を調べるための超音波検査(NT計測、コンバインド検査、オスカー検査など)の時期(妊娠11週~13週)とも重なりますが、胎児超音波専門外来では、これらの染色体異常の確率を算出する検査は行いません。
行わない理由は、13トリソミーや18トリソミーなどの重篤な染色体異常は形態異常から分かることが多く、大きな心奇形を伴わないダウン症(21トリソミー)に関しては、いくら時間をかけて丁寧に検査を行っても、ダウン症であるか、そうでないかを断定することはできず、単にダウン症である確率が何%(あるいは何分の1)だということしか分からないためです。確率が高くても羊水検査で染色体は正常ということも少なくありませんし、逆に確率が低くてもゼロではないため、ダウン症ではないとは言えません。
母体から採血だけして、胎児にダウン症などの染色体異常が無いかを調べるNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査:non-invasive prenatal genetic testing)では、胎児の形態異常の診断はできません。胎児の命に関わるような形態異常があっても、ほとんどの場合、NIPTでは陰性(異常無し)という結果がでます。高額なNIPTを受ける前に胎児超音波検査を受けて、妊娠継続が難しいような重大な形態異常がないかを確認しておくことが大事であると考えられます。
なお、NIPTは、結果が陽性、陰性として報告されますが、これも羊水検査や絨毛検査のように染色体異常の有無を明確にできる確定検査ではなく、NT計測、コンバインド検査、オスカー検査と同じように非確定検査であるため、胎児超音波専門外来では行いません。
胎児が大きくなって比較的細かい部分まで観察できるようになるため、出生前診断しておくことで命を落とすことを防いだり後遺症を防いだりすることができるような形態異常の大半が診断できるようになります。ただし、口唇裂や心奇形の診断がしやすくなるのは、妊娠18週以降です。
妊娠後期になると胎児が子宮の壁や胎盤と接することが多くなるため体表が見えづらくなりますが、心臓などの内臓は大きくなった分、観察しやすくなります。また、妊娠中期では症状が現われていなかった軟骨無形成症、消化管閉鎖、胎児の卵巣嚢腫などの異常が診断されることがあります。
受診を希望される方へ
- 予め、検査承諾書の内容をご確認下さい。>>承諾書
- 完全予約制のため、電話で予約をお取り願います。通院中の病院・クリニックの紹介状無しでも受診いただけます。
予約電話番号 049-238-8283 - 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い感染防止のため付添者は原則として1名までとさせていただきます。
- 受診に伴う手続きなどがあるため、予約時刻の30分前までに来院をお願いいたします。
遅刻された場合は、予約をキャンセルさせていただくこともございます。 - 自由診療(自費診療)となります。料金は、下記のとおりです。
- 妊婦健診等で使用する助成券は使用できません。
超音波検査(妊娠10週~14週) | 35,200円(初診料込) |
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超音波検査(妊娠15週以降) | 38,500円(初診料込) |
超音波再検査 | 22,000円(再診料込) |
診療情報提供書(異常が見つかった場合) | 2,750円 |
注:双胎の場合の超音波検査は、上記の 1.5倍です。品胎の場合は、2倍です。
スタッフ紹介
名前 | 専門分野 | 資格 |
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馬場 一憲 |
産科超音波診断 胎児診断・胎児治療 婦人科超音波診断 |
埼玉医科大学 客員教授 埼玉医科大学 名誉教授 日本産科婦人科学会専門医 日本超音波医学会超音波指導医・専門医 |
診療担当医表
令和6年4月1日現在
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 | ||||||
午後 | 馬場 一憲 |